文 阪下
1944年、冬が明ける直前の数日間、ベルギーの小さな街で、2組の強力な軍隊が激しく血を流し戦った。その間、銃撃戦の真っ只中で身動きのとれなくなった民間人のことを心配する者はほとんどいなかった。戦闘と殺し合いの最中で、1人のアメリカ兵が、上官の指令に従うか、ある民間人の命を救うかの狭間で揺れていた。どの道を選んだとしても、その代償は高く、彼はすべてを失う可能性さえあった。戦争という舞台では、公平という言葉など意味を成さない。良い人間であれば、良い兵士になれるのだろうか。人を殺すこと、自分が生き延びること、その2つにはどんな風に線引きをするのか。正しい行いの代償とは・・・果たして正義に価値などあるのだろうか。 3